小食、粗食、断食

 新型コロナウィルスによる自粛生活で体重が2キロ増えました。また、同じ時期に臀部の筋肉を痛めたため更に運動が出来ない状況であったことも太った要因です。自身のヨガの練習が出来ず、食べることでストレスを解消していたのでしょう。このようなの方も多かったと思います。「コロナ太り」という言葉さえ出来ました。

 

 いろいろと健康情報にアンテナを張っていて、5月に断食に関するYouTube動画が目に止まりました。薄々、「食べ過ぎだな」と感じていた頃でもありました。「お腹が空いてもいないのに食べる。」「食事の時間が来ても、お腹は空いていない。」といった状況でした。

 

 ものは試しに朝食を抜き始めました。当初は少々辛くもありましたが、すぐに慣れました。6ヶ月後の結果をお伝えします。体重は約10kg減、BMI(体重➗身長(m)✖️身長(m)) 18。 体脂肪率7ポイント減。太っていた訳ではないので、今の私は痩せすぎなのでしょう。しかし体調はすごぶる良いです。少食や断食の効果は覿面です。

 なお、夏には臀筋痛も治り、以前のようにヨガも練習できるようになりました。

 

少食、断食についての言い伝え

 「腹八分目医者いらず」や「一日一食は聖人の食事、二食は人間の食事、三食は獣の食事」など、少食や断食が健康に良いとする言い伝えやことわざがあります。食べ過ぎが良くないことは理解されている一方で、次のような主張もあります。「三食ちゃんと食べたほうが良い。」「朝食を食べないと仕事や勉学に支障が出る。」私は、朝食不要論を支持します。様々な考えはあると思いまが、朝食を食べないメリットについて多くの論文が発表されています。

 

16時間断食

 私は朝食を抜いていますが、厳密に言うと一日の中で16時間食べない時間を設けています。原則とて、夜20時から翌日の正午まで食べません。水やお茶は飲みます。16時間の断食を日々実践することで体内でどのようなことが起きのでしょう。

 

オートファジー

 オート(Auto)、自ら、ファジー(Phasy)は食べると言う意味です。この研究により大隈良典東京工業大学栄誉教授は2016年ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。オートファジーとは、体内の不要なタンパク質を再利用して新たな細胞を作り出す 身体の仕組みです。しかしながら、オートファジーが発動するのは空腹時。一般的に、最後の食事から12時間から16時間後に発動します。また、この時点で肝臓に蓄えらた糖質が枯渇し脂質(ケトン体)をエネルギーとして代謝し始めます。(後述) また、不要なタンパク質だけでなく細菌やその死骸も新しい細胞の材料として活用するので、免疫力向上に繋がります。

 

サーチュイン遺伝子

 摂取カロリーを25%以上減らせば、サーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化し 若返ると言われています。40%食事制限をしたサルと通常の食事をしたサルの比較実験が有名ですが、食事制限をした方は毛並みがよく若々しく、一方で通常の食事のサルは老けて見えます。サーチュイン遺伝子は細胞内のエルネギーを産生する小器官であるミトコンドリアを増量させエネルギー産生を増やす効果があります。 

  

糖質代謝と脂質代謝

 生物は糖質や炭水化物をエネルギーとして活用する一方で、脂質(ケトン質)も活用することができます。体内に糖質があれば、これを優先して活用し、枯渇した時に脂質を活用し始めます。概して、最後の食事から12時間から16時間すると肝臓内の糖質が枯渇します。オートファジーが発揮されるのと同じタイミングです。

 糖質は瞬発力に優れたエネルギーであり、脂質は持久力に優れたエネルギーです。

 人類はその長い歴史において狩猟採取の歴史が圧倒的に長く、農業(小麦の栽培)を開始したのは約8,000年前です。それ以降、農業技術の向上で炭水化物の摂取が増えていき、三食満足に食事が出来るようになったのはここ半世紀です。しかも先進国において。

 一方で、生物は環境の変化にしたがって進化しますが、急激には進化しません。人類の農業革命や産業革命の進捗には到底追いていけません。このため、人は糖質を摂取してエネルギー活用できるけれども障害を伴います。

 

糖質摂取の問題点

 糖質や炭水化物を摂取すると血糖値が急上昇し急降下します。これにより血管がダメージを受けたり、血中の血糖はインシュリンが作用してエネルギーとして取り込まれるが、糖分摂取が過多になると膵臓インシュリンの産生が追いつかず糖尿病を発症したりします。

 

糖質中毒

 糖質摂取により血糖値の乱高下を繰り返すと、血糖値が下がった時により糖質を求めるようになります。

 

脂質の誤解

 脂と言うと敬遠する人も多いですが、人類が長い歴史の中でエネルギー代謝として活用していたエネルギー代謝であり糖質代謝より安全であり身体への負担は少ないです。

 

 しかしながら、現代人の食事では不足している脂と摂取過多の脂があります。

 

不足している脂

不飽和脂肪酸-オメガ3(EPA DHA(青魚) アマニ油、エゴマ油) オメガ9(オリーブ油)

飽和脂肪酸-中鎖脂肪酸 ココナッツオイル、MCTオイル(Medium-Chain Traicylglycerols)、ギー(グラスフェドギー)

*分子構造により余分な脂として体内に蓄積されることはない。

  

バターコーヒー

私は朝にコーヒーにMCTオイルとギーを混ぜ飲んでいます。

 

摂取過多の脂

不飽和脂肪酸-オメガ6(サラダ油、菜種油、ゴマ油)

飽和脂肪酸-動物由来の油 バター、ラード

 

*理想的なオメガ3とオメガ6の比率。1:2 現代人は1:10とオメガ6過多の食事になっている。

 

取らない方がよい脂

マーガリン、ショートニング(菓子パンやお菓子に含まれる。要注意)

完全に悪い脂を回避するのは難しいですが極力良い脂を摂取するよう心がけたほうが良いでしょう。

 

三日以上の断食

 最後の食事から12から16時間が経過するとオートファジーや脂質代謝が発動するものの、身体から完全に糖質を抜き切るには3日は掛かります。オートファジーや脂質代謝を更に効かせるため9月と11月に三日の断食に挑戦しました。断食明けは、頭はスッキリし本当に疲れ知らずになりました。野生の動物は体調が優れない時に断食するといいます。

 

好転反応

 しかし、ヒトは元来、脂質代謝に優れているにもかかわらず、現代人は糖質過多の食事をしているため、脂質代謝を忘れている体質になっています。血中に糖質が切れてくるとフラフラしてきます。長期の断食では、完全に糖質代謝から脂質代謝に切り替わる時点(1日目から2日目)に好転反応が訪れます。イライラや頭痛やフラフラなど。人によって症状はまちまちですが、私の場合はフラフラでした。2回目の方が症状は穏やかになりました。身体が脂質代謝を思い出してきているのでしょう。

 

断食の注意点

 断食中は何も摂取しないわけではなく、水分やミネラルなど最低限の栄養は補給しなければならずそれなりの知識が必要です。しっかり勉強してから挑むことが肝要です。

 

断食を契機に腸内環境を改善

 断食後は胃から腸までカラッポ。腸内環境を整えるには絶好の機会です。断食後は発酵食品(ぬか漬け、納豆、味噌)や野菜中心の食事にして善玉菌優位な腸内環境にします。

 

少食や断食の効果

少食や断食の効果をまとめます。

 

1.    痩身

2.    免疫力向上

3.    疾病の治癒

    オートファジーは不要なタンパク質を新しい細胞に作り変える機能です。

    認知症の要因はベータエンドロフィンというタンパク質が脳の血管に蓄積して

    発症することが分かっています。粗食は認知症にも効果があります。

4.   持久力向上

  1. 寿命、健康寿命の向上
  2. 睡眠の質の向上睡眠時間の少                          消化にはかなりエネルギーを消費します。食べない分だけ身体への負担も減り睡眠時間が短くなります。
  3. アンチエージング
  4. 頭脳が冴える(食後の睡魔に襲われなくなる)                    消化にかかるエネルギーを節約できる分、頭脳活動に振り向けられる。
  5. 身体機能パフォーマンス向上
  6. 毒素排出
  7. 食事にかかるお金や時間の節約                                                                            食事には、食べる時間だけでなく、買い物、調理、皿洗い、歯磨きと結構な時間がかかります。
  8. 食糧危機に対応
  9. 食料自給率の向上                                                                                            カロリーベースで日本の食料自給率は約40%。仮に全日本国民が摂取カロリーを30%減らせば食料自給率は約70%。食料廃棄率を限りなくゼロにしたり、効率の悪い畜産や酪農を野菜の栽培に転換していけば自給率100%も可能?!
  10. 医療費の抑制                                                                                                        少食は、糖尿病、虫歯、歯周病、ガン、認知症と様々な疾病に効果があり社会全体での医療費抑制に寄与します。

 

糖質制限ダイエットについて

 巷で言われる糖質制限ダイエットは少食や断食と同等の効果が得られますが、食べて良い食品とそうでないものを識別しなければならず煩わしく思います。

 

一日一食を実践している有名人

内村航平タモリビートたけし、水谷豊、福山雅治、GAKUT、ミー(ピンクレディ)

 

少食を実践した歴史上の人物

 

水野南北 

 江戸時代中期の観相学の大家。観相学は人相からその人の人生を占う学問。南北は少食が運気を向上させる「節食開運説」を提唱。

 

ルイジ・コルナロ 

 16世紀のイタリア貴族。若い頃の暴飲暴食を改心し一日350gという極少食を実践。当時としては破格の102歳の天寿を全う。

 

人生の愉しみ

 食事は人生の愉しみの一つ。リタイア後はグルメを満喫しようと考えている人も多いと思います。粗食を勧められたら、そのメリットは理解できる一方で、生きる喜びが無くなると悲観する人も多いと思います。でも、「食事の時間が来たら食べる」より「お腹が空いたら食べる」ほうが美味しいはずですし、食べるだけが人生とは思いません。定年後であろうが、老齢であろうが何かテーマを持って取り組むのは素晴らしいことと思います。食に関わること以外で。人生100年時代。葛飾北斎の言葉を今一度噛みしめます。

「私は、6歳から物の形状を写す癖があり、50歳ごろから数々の作品を発表してきたとはいうものの、70歳以前に描いたものは、実に取るに足らぬものばかりである。73歳にして、ようやく禽獣虫魚の骨格や、草木の生え具合をいささか悟ることができたのだ。だから、80歳でますます腕に磨きをかけ、90歳では奥義を究め、100歳になれば、まさに神妙の域に達するものと考えている。百数十歳ともなれば、一点一画が生き物のごとくなるであろう。願わくば、長寿をつかさどる君子よ、わが言葉が偽りならざることを見届けたまえ。」

北斎70代の時の言葉です。89歳まで生きますが、当時としては超長寿。北斎も粗食を実践していたのではと思います。

人は食欲を乗り越えたら素晴らしい景色が見られると思うのです。

 

                                        以上