体幹を鍛える(先日、近所の自治体で話した内容です。)

 

「痩せたい」「身体を柔軟にしたい」「体力をつけたい」「心身共に健康でありたい」。ヨガ教室に訪れる生徒さんの動機です。ヨガは老若男女が取り組めるものですが、圧倒的に女性のものになっています。インドでは、かつて女人禁制だった面影など微塵もありません。ヨガが男性を遠ざけているのは、「ヨガを行うには身体が柔軟でなければならない」との固定観念があるからではないでしょうか。確かに女性の方が関節の可動域は大きいです。新体操の選手やバレリーナを見れば一目瞭然です。しかしながら、女性だから身体が柔軟とは限りません。ヨガやスポーツの日頃から取り組んでいなければ、身体を自在に動かすことは出来ません。そして多くの人が考えが及んでいないことが、「ヨガには筋力が必要」です。

ヨガの殆どのポーズでは、身体の幹を固定して腕や脚を伸ばしたり胴体を回転したりします。この幹を固定する要素に筋力が関わってきます。いわゆる体幹です。体幹(インナーマッスル)を強固にして骨格を固定しアウターマッスルを柔軟にしてポーズをとります。体幹が強ければ強いほど、身体の可動域は広がっていきます。ヨガが体幹を鍛えるのにうってつけと言われる所以です。

 

体幹の使い方を忘れている現代人

  「お年寄りは、皆、猫背になっていたり腰が曲がっていたり、膝が伸ばせなかったり。自分が年をとってもあのようになりたくない。」ある生徒さんは吐露します。中高年に限らず若い人でも猫背が進行しています。四六時中スマホを眺めているからでしょうか。一方で背筋がピンと伸びているもいます。滅多にお目にかかりませんが。意識をしなくても姿勢をきれいに保てるが体幹の力です。

    肩凝りや五十肩に悩んでる人は少なくありません。症状からすると肩や肩甲骨周りの筋肉組織が凝り固まって血流が滞っているからと結論付ける人は多いです。事実、整形外科や接骨医院での治療は患部への湿布や低周波を当てたりするものです。しかしながら、私はその原因を体幹を使えていないことに求めます。座った状態でも立った状態でも、腹筋に力を入れてみてください。肩が開いて、背筋が伸びます。その時に肩に力は入っているでしょうか。力が抜けているはずです。一方、腹筋を緩めてわざと猫背になってください。肩が力んでいませんか。背筋が伸びていようが猫背だろうが、身体を保つ運動量に差は有りません。一方では体幹(腹筋)を使い、もう一方では肩の筋肉(僧帽筋など)を使っているのです。肩凝りはよく聞きますが、腹凝りなって聞いたことありません。腹筋運動のしすぎで腹筋が筋肉痛ということはあるでしょうが、症状として慢性化するなんて聞いたことありません。体幹の能力は高いのです。しかし鍛えないと使えません。お年寄りであろうと若者であろうと体幹の潜在能力は眠っているのです。ヨガや体幹レーニングを継続的に一年や二年行ったとしても限界には達しません。かく言う私も体幹強化の途中も途中です。最近の研究では年齢に関係なくトレーニングを積めば筋力がアップすることが証明されています。

 

呼吸について

    体幹を鍛えるトレーニングとして真っ先に挙げたいのが複式呼吸です。体幹の一つである横隔膜を大きく動かせば間違いなく体幹を鍛えられます。ヨガの練習中だけでなく常に複式呼吸を心掛ければ成果は上がります。また、常に複式呼吸を心掛ければ、就寝中も腹式呼吸になります。寝ている時でも体幹レーニングです。

 

内転筋群と外転筋

 肩凝りに並び膝痛も多くの人を悩ませています。膝関節は、膝蓋を前に向けた状態で屈伸する関節です。膝の横にストレスを掛けると膝のトラブルの原因になります。この視点から、立った時に爪先を開くと膝の内側にストレスをかけ膝を痛める要因になります。かねてより指摘しています。さらにこの考えを延長して行くと、爪先と膝は極力揃えた方が膝にとっては良いと言えます。さて、座った時に常に膝を揃えることは出来ますか?脚をくんでは行けません。結構辛いと思います。女性であれば、「股を開くのははしたない」と言われているので慣れている人はいるかもしれませんが、男性についてはそもそも社会の目は注がれませんから膝揃えは辛いのではないでしょうか。辛いと感じる人は内転筋(腿の内側の筋肉)と外転筋(中臀筋、お尻の横の筋肉)が弱っている可能性があります。また、辛いと感じる人は仰向けになった時に、爪先が外に開く、または足の裏が内側に閉じる傾向があります。

 

 背筋を伸ばそうが猫背だろうが同じ運動量です。同じく爪先が閉じようが開こうが同じ運動量です。爪先を外側に向ける癖のある人は足の小指側に重心を傾けるため腿の外側を酷使している可能性があります。腿を触ってください。腿の前側や外側から触ると大腿骨に直ぐ到達しますが、内側と裏は遠いです。内転筋群とハムストリングス(腿裏)は大きい筋肉なのです。爪先を開いている人は腿の外側が凝っている可能性があります。また、外側の筋肉が厚くなるので脚が太くなる原因にもなります。

 

外反母趾

 また、外反母趾を患っている人は足の親指の靭帯が緩んでいるので思うように足の内側(親指側)に重心を置けず外側重心になる傾向にあります。反対に爪先を開くと母指球にストレスを掛け外反母趾の原因ともなるとも言えます。女性に多いと思われがちな外反母趾ですが、男性にも多いです。男性の場合、足の組織が女性より頑丈なため痛みに発展するまで時間がかかるように思えます。医者を受診する段階ではかなり進行している可能性があります。

 外反母趾の対策としては、母趾側に重心を載せる、内転筋を鍛える、テーピングなどありますので早期に対処していただきたいと思います。

 

 

 

骨盤を立てる

 体幹の話を続けます。腹筋の他の正しい姿勢の要素に「骨盤を立てる」もあります。猫背の人は骨盤が後傾しています。あぐらをかいて座ったり長座で座ったりすると腰が後ろに倒れ姿勢を維持出来ません。腹筋、内転筋群、外転筋に加え腸腰筋も使えていないようです。腸腰筋は骨盤と大腿部を繋ぐ筋肉です。腸腰筋が弱ると脚を上げることも難しくなり、歩幅も狭くなり、歩行困難になると言われています。

 このような方は、パチモッタアーサナ(長座からの前屈)が難しいです。筋力が無いとヨガが難しい例でもあります。

 

体幹を鍛える副次的効果

 体幹を鍛えること姿勢が美しくなりますが、痩せ体質になったり便秘の解消にも繋がります。エネルギーを代謝する最大の器官は筋肉ですので、体幹の筋力増強で代、痩せ体質になります。また、内臓に近い筋肉が活性化するので便を押し出す能力も向上します。

 

まとめ

 ヨガは身体の柔軟性を向上させる以上に基礎的な筋力を付ける効果があり、姿勢を美しく保ったり、ケガのしにくい身体作りに寄与します。転倒や骨折がきっかけとなって、寝たきりの生活になる人も少なくありません。

 ヨガはその人のレベルに合わせて取り組むことの出来るものですので、積極的にヨガを取り入れていただければと思います。